interview zine _ 「コロナ禍に考える音楽文化の変遷」
はじめに
新型コロナウイルスのパンデミックにより世界中で人々の「移動」や「交流」が制限され、社会の形は大きく変わってしまいました。
音楽に関わる環境だけをとっても、フェスやライブなど人が集まるイベントが軒並み中止になり、録音物でなくインターネットも経由せずに生の体験としての音楽を享受する機会が極端に少なくなりました。また、家で過ごす時間が増えたことにより、音楽と接する機会が殆どの場合でインターネット上に移行したと言っても過言ではありません。さらには、apple musicやSpotifyなどのサブスクリプションサービスの台頭によって音楽との接し方そのものも、この期間に大きく変化しています。
もちろんその事実は、アーティストにも音楽環境の変化として多大な影響を与えます。
いつの時代も文化は人々の日々の営みの中から生まれてきます。音楽を生み出すアーティストも同じく、パンデミックの渦中で考え表現し作品を発表します。これまでとは少し状況が違ったその過程の中で、アーティストがいったい何を考えてどのように表現しようとしているのか?
今回、オープン当初から店頭で取り扱っているCDのレーベル、東京を拠点に活動する「flau」に協力して頂き、所属する4組のアーティストにインタビューを行いました。ジャンルや国境の垣根なく独自のセンスと価値観でリリースされる「flau」の作品は国内外から高い評価を得ています。
日本国内だけでも、それぞれの立場や状況によって様々にことなる影響を受けている現在の状況をアーティストという立場でどう捉えているのか?
精神的にダイレクトに影響を受けて作品が変化するアーティストもいれば、より自らの内面に潜り込むことで本質的なアプローチを追求し続けるアーティストもいるでしょう。ただ、一貫して言えることは、表現活動の様々な部分に今回のパンデミックの影響が抗い難く現れてしまうということ。
このようなタイミングに音楽という文化について、聴くだけでなく一歩踏み込んで考えてみることで、より深い音楽への理解と新たな聴取体験のきっかけになればと思います。
MNOU BOOKS 石井 勇
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01_ interview with Henning Schmiedt / GERMANY
02_ interview with Rima Kato / JAPAN
03_ interview with Cicada / TAIWAN
04_ interview with Motohiro Nakashima / JAPAN
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今回MINOU BOOKSさんでフェアを開催いただき、ありがとうございます。
元々FLAUはライブ・イベントとして15年前にスタートしており、レーベルの始まる当初から場が持つ力、というものを意識しながらやってきました。レーベルの始まりから現在にいたる15年間はメディアが紙からウェブへ、CDからデジタルへと移行するその過度期そのものでしたが、このコロナ禍においてその転換は一段と早まり、イベントもオンラインへと進むなど、否応なく音楽の届け方、接し方についてこれまで以上に考えるきっかけとなりました。この大きな変化の中で、沢山の人が集まることの刹那的な高揚感や何かひとつの音楽的な文脈を世の中に提示することよりも、個々の音楽が人それぞれとダイレクトに繋がること、個人であることを改めて認識できるような場としての機能を模索することがレーベルの役割であり、小さな音楽の火が消えないようにこれからも光を当て続けていきたい、と考えています。
今回のフェアがその逡巡とともに、何よりも音楽それ自体の持つ価値の普遍的な魅力に触れていただける機会となったならば、この上なく嬉しく感じます。このような場を設けてくださったMINOU BOOKSに感謝します。
flau フクゾノヤスヒコ