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interview with Motohiro Nakashima

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interview with
Motohiro Nakashima / JAPAN

広島県福山市出身のギタリスト。10代前半からギターを弾き始め、
18歳から作曲を開始。関西での活動を経て、現在は地元福山を拠点に活動中。

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Q.新型コロナの感染が拡大してからの2年間はどのように過ごされていましたか?
音楽について、生活について教えてください。

僕は普段は会社に属し染色の仕事をしています。皆さんもご存知のようにコロナの繊維業界への影響は大きく、休業が増えまとまった時間ができました。それを利用し溜まっていた事をやっていきました。その一つがレスリースピーカーの構築です。昔、実家の古いエレクトーンを処分した時に、内蔵するレスリースピーカーを取っておきました。そのむき出しのスピーカーを収納するケースを作り、プラグインやスイッチを取り付けギター用のスピーカーとして利用できるようにしました。今後の作品で使用していく予定です。
音楽制作については、「Gathering The Light」の作業は終了していましたので、次のアルバム用のデモ制作をしていました。

Q.音楽や本といった文化的な物事の価値が、「移動」と、人との「交流」が制限されるコロナ禍で、自身と向き合う時間が増え再認識されたように感じています。
コロナ禍以前と以後で自身の音楽や音楽への向き合い方がどう変わったか、もしくは変わらなかったか教えてください。

自分自身と音楽との向き合い方は、ほとんど変わっていないと思います。僕にとっての音楽は、自分の中の衝動や何か脅迫観念みたいなもので突き動かされている感じがします。音楽を作らないと自分が自分でなくなるような。おそらく価値や環境の変化に関係なくこれからも向き合っていくのだと思います。

Q.それは以前から感じていたことですか?それとも全く自分のなかになかった要素がでてきましたか?

音楽制作は、僕にとって雲をもつかむような感覚で、言葉で表現できない感情との対話や控えめな自己表現の様なものです。コロナ禍などの社会的要素も音楽に影響ありますが、それは最初から自分の音楽の根底にあるものと感じています。

Q.意図せずして、この間の変化により自身の音楽や活動が社会からの影響を多大に受けているという事実に気づかれたと思いますが、それについてどう感じていますか?

この変化に反応し対応しながら、自身も変化しそれぞれの社会活動を続けていくしかないと感じています。

Q.この間に変わった(もしくは変わらなかった)価値観を出発点として自身の音楽が今後変化していく実感はありますか?

これまで、環境や生活の変化により自分の音楽は変化してきました。変化する実感はあまりありませんが、無意識のレベルでの変化が音楽に影響するかもしれませんし、変化しないかもしれません。いずれにせよ、これから出来てくる音楽を楽しみにしています。

Q.サブスクリプションで音楽を聴く時代が到来し、世界中の音楽のジャンルと地域の境界がオンライン上で融解して混ざり合っている感じがしています。これまでの民族的な風習や自然環境といった土着の文化から派生してきたそれぞれの地域の音楽がこのような状況になっていることに対してなにか思いはありますか?

必然的な流れだと思います。インターネットの発達から音楽環境も変化し、サブスクリプションの登場により一気に混ざり合ったような感覚です。「地域の音楽」は音楽産業と関係ないところでは文化的に必要な要素として生き続ける一方、音楽産業ではレコードの時代から消費され続けています。以前はジャンルや地域の境界がしっかりしていましたが、音楽のあり方としては、今もそんなに変わってないように思えます。それぞれの具が混ざり合ってカレーになったような?

Q.自分が今所属している国や地域、社会についてどのように捉えていますか?

ここ数年、時代や社会構造の変化の中にあります。コロナによりその変化が加速されたと誰もが感じていると思います。今までの考えのままでは適応できない事も出てくるかもしれません。自分自身も変化に対応することを踏まえた生活づくりや心構えが必要だと思っています。

Q.これからの展望をお聞かせください。

これからどんな時代が来るのか、まだまだ楽観的になれない状況も続き正直どうなるか分かりません。その中で音楽制作を続けて行き、それを通じて様々な人と交流していけたらと思っています。

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recommended books
子どもの宇宙 / 河合隼雄 (岩波新書)

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Motohiro Nakashima / JAPAN
広島県福山市出身のギタリスト中島基裕は、10代前半からギターを弾き始め、18歳から作曲を開始。関西での活動を経て、現在は地元福山を拠点に活動中。これまでに複数のレーベルから3枚のアルバムをリリースしているほか、映画や劇伴の音楽を担当、自身のレーベルNovemberを主宰している。FLAUからリリースされる最新作「Gathering The Light」は、アコースティック・ギターをはじめとする多数の楽器とゲストプレイヤーを招き、家庭的で素朴な雰囲気を醸し出している。

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