歴史の屑拾い
藤原辰史
¥1540(税込)
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本全国、それぞれの土地で生きた古老の話を聞き取った宮本常一の「忘れられた日本人」を読んだ時のような印象を受ける。
本書は、歴史を、それを規定する立場にある側からの視点で見るのではなく、タイトルにあるように、そこからこぼれ落ちた断片を拾い集めるようにして、そこに実際に生きた人や物、土地の痕跡から歴史を紡いでいく歴史家としての思考を綴ったエッセイだ。
新型コロナウイルスが蔓延し始めた時の、社会の雰囲気や、それが自らの生活にどのように影響を及ぼてきたのかという実感さえ私たちはすでに忘れようとしている。近い未来、この災禍が、大文字の歴史という、まるで日本人すべてに共有できるような物語でどのように語られることになるのだろうか。そこに自分たちの生きた実感は伴っているのだろうか?
今生きているこの時間もいつかは過去になり、その堆積として歴史が出来上がっていく。
歴史を生きた市井の人々のちいさな声が大事になるとしたら、今を生きている自分のちいさな声も同じように大事にしたい。大きな物語に回収されて無かったことにされないように。
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歴史をどう語るのか。
こぼれ落ちた断片の生が、大きな物語に回収されないように。
戦争体験者の言葉、大学生への講義、語り手と叙述……。
研究者である自身に問いかけながらの試行錯誤と、思索を綴るエッセイ。
【目次】
プロローグ ぎくしゃくした身振りで
1章 パンデミックの落としもの
2章 戦争体験の現在形
3章 大学生の歴史学
4章 一次史料の呪縛
5章 非人間の歴史学
6章 事件の背景
7章 歴史と文学
エピローグ 偶発を待ち受ける
出版社: 講談社
サイズ:208ページ 13 x 1.5 x 18.8 cm
発行年月:2022/10/20