2023.11.02
HIKE(熊本県玉名市)
先日、玉名市にある、HIKEというホステルにて開催れた本のイベント「BOOKS and BEACON」に参加させて頂いた。
その時に感じた、HIKEという場所の素晴らしさを忘れないように備忘録として書いておこうと思う。
まず、イベントを始めるコンタクトの部分から少し違っていたこともHIKEという場所をどう捉えるか?と考える時に、大きいと思っている。
今回のイベントの企画はHIKEで働く土屋さんというスタッフだ。彼から最初にメールをもらった時に、イベントという催しに最近は少し懐疑的になっていた僕はあまり良い反応を示さなかったと思う。
それに、そもそも新刊書店という業態があまりイベントに向いていないということも、これまでの経験から感じていたというのもある。
どこでも手に入る本という物をただ編集して並べているだけ。といったらあまりに味気ないが、お店という場所の空気感や本棚の並びなどの世界観を含めて見てもらわないと伝わるものも伝わらないのではと思っている。その事もあって、そもそも持っていく物量に制限が大きなイベントという形では本来の持ち味を発揮するにはとても心許ないと思っているのだ。
そんな僕のそっけない返信に対して、彼は熱量120%のメールで返事をしてきた。
そのメールを読んで、本当に気持ちの部分でこのイベントをやろうとしている事が伝わってきて、心を動かされた。
それから、彼はわざわざお店に挨拶にと足を運んでくれて、その後もSNS上でイベントが少しでも盛り上がるようにと熱のこもった宣伝を続けてくれた。なんだかその感じが懐かしかった。何か新しいことを始める時に、出来ることはなんでもやってみようと思っていた感覚。パッションに溢れていてとても気持ちの良い人だ。
イベント当日、まずHIKEのロケーションに驚かされる。海が近い事もあって、大きく緩やかに流れる菊池川。川に架かった鉄橋を電車が走る音が心地よく響いてくる、河川敷をすこし降りた場所にある元整形外科のビルをリノベーションした施設がHIKEだ。
1階部分は、入り口のエントランス兼雑貨店を抜けると両側に広く大きな窓があるカフェスペース。外の中の境界線が曖昧で、イベント当日の気候がとてもよかったこともあり、開け放たれた窓から入ってくる風がとても心地よかった。
ランチの時間になると地域の方から、市外、県外の方、それに今回のイベントを目指してこられた方が混ざり合って、とても自然に多様な人が交差する空間が生まれていた。印象的だったのは、カフェを目当てで来店された方がスムーズにイベントにも興味を持ってくださり、そのまま本の購入に結びつくというケースだ。
カフェに設けられた、大きなテーブルをお客さんが囲んで座るスタイルは、自由度が高く、日本人には不向きだと捉えられがちだが、HIKEでは、非常に大きなテーブルのサイズ感もあって、カフェとフリースペースの間のような非常に曖昧な空間を作り出していて、その空間の懐の広さのようなものが、お客さんにも安心感を与えていた。
その安心感は、その場にいる人たちの楽しいや嬉しいにつながり、その雰囲気がイベント自体を盛り上げてくれていたように思う。
玉名という場所やそこで働く人、そして地域とのかかわり。さらには今回のように外から何かを持ってきて地域に対して開いていく行動力と、丁寧な企画力。そして、なによりそこに込められた静かで熱い思い。とても学びの多い出店になった。
街の本屋のことを考えていると、日々続けていく大変さからネガティブに考えてしまう事が少なくない。
それだけに、今回、本屋という営みをまるごと肯定して応援してくれるような場所を作って頂いたことがとても嬉しかった。
土屋さんは、本屋は街の灯台のような存在だと言ってくれて、イベント名が「BOOKS and BEACON(灯台)」になったが、
灯台はHIKEであって、僕たちはHIKEという灯台に照らされて見守られている存在だったように思う。
改めて、とても素晴らしいイベントを企画して頂きありがとうございます。
このタイミングでHIKEという場所に、そしてそこで働く皆さんと出会えたことがとても嬉しいです。